腕時計の防水機能『日常生活用防水時計とは?』【2〜20気圧防水まとめ】

更新日2024/05/19

こんにちは!SHINKODO WATCH Online Storeです。

みなさんは腕時計の防水機能を意識したことがありますか?裏蓋の表記に、「WATER RESIST」、「W.R.10BAR」などの文字をご覧になったことがあるかと思います。

また、仕事の作業目的で腕時計をお求めになった方は、「自分の時計には10気圧防水がついているから大丈夫」と考えている方も多いでしょう。

そしてその10気圧防水は「100mの気圧に耐えられるから海に潜れるでしょ。」という認識も少なからずあるかと思います。店頭でお客様と話をした中でもそういった認識をされている方も多くいらっしゃいました。

実際には、その認識と各種防水機能、その推奨使用シーンではギャップがありそうです。
今回は腕時計の防水機能とその使用シーンをお伝えできればと思います!

防水機能のカテゴリー

「WATER RESIST」、「W.R.10BAR」などの各種防水機能はJIS(日本工業規格)とISO(国際標準化機構)に準じている形です。(舶来時計はISO基準が多いです)

大枠として「非防水時計」、「日常生活用防水時計」、「日常生活用強化防水時計」、「潜水時計」、「飽和潜水時計」があります。

その中で以下の時計は少し特殊。
・「非防水時計」は防水性がないため水に触れることがNGです。アンティーク時計や懐中時計に多いです。
・「潜水時計」、「飽和潜水時計」はいわゆる「ダイバーズウォッチ」です。海に潜る機能性はしっかり確保されています!

よく見かける、「WATER RESIST」、「W.R.10BAR」などの表記がある時計は「日常生活用防水時計」、「日常生活用強化防水時計」にカテゴライズされます。そして、大部分の時計がこれらのカテゴリーの機能性を持っています。

今回はこの2種類に絞ってご紹介します!

防水機能は「静止状態」の値

「WATER RESIST」をはじめとする防水性能の表記のある「日常生活用防水時計」、「日常生活用強化防水時計」は、
日本工業規格(JIS)と国際標準化機構(ISO)の一定の条件をクリアしているものです。
 その中で、JISにおける腕時計の規定である『 JIS B 7021:2013:一般用防水携帯時計−種類及び防水性能』(国際標準化機構のISO 22810:2010に対応)
の防水性能の試験方法の加圧防水性試験は、腕時計に対して、”表記の圧力をかけるのみ”の試験としています。

これは、”表記の圧力以上を想定していない”ことを意味します。「10気圧防水=”10気圧まで耐えられる”それ以上は不明」という認識です。

そして何よりこの試験はあくまで「静止状態」での話です。

実際に腕時計をつけて活動するとなると腕時計にかかる水圧は状況によって変化(増加)してしまうのです。


※「潜水時計」、「飽和潜水時計」は水中での動作を考慮して設計されています。認識は「DIVER’S WATCH 100m=”水深100mまでなら潜って活動できる”」です。


腕時計にかかる水圧は変化する


水圧のかかる状況としては、「流水」だったり「水中での動作」だったりで、腕時計にかかる圧力は簡単に変化してしまいます。

水道の蛇口から流れた水が直接当たるだけで1.5〜3気圧、目一杯にしてその下に腕時計を置けば10気圧前後、プールでクロールや平泳ぎをすると約13気圧ほどになるそうです。(あくまでも目安です。)

→10気圧防水の腕時計でも「着用してプールで競泳をする」のは難しそうですよね。


各防水機能の詳細

ここからは「日常生活用防水時計」、「日常生活用強化防水時計」の防水機能の詳細をお伝えします。ご自身の時計や欲しい時計の防水機能と見比べてみましょう。(※表記はJIS規格準拠)

◇日常生活用防水時計:2~3気圧防水 

表記:『WATER RESIST』、『W.R.』など
ビジネス、日常生活などの普段使いのみに使用し、汗をかくアクティブシーンは外した方が無難です。

特徴は
○「表面に水が少しかかるくらいはOK」です。

日常生活での汗や洗顔のときの水滴、表面に水滴つく程度の雨などに耐えられるものですが、洗い物程度の水仕事、などの「水を確実に被ってしまうような状況」での使用はNGです。雨のシーンも着けるのは避けるのが無難。
また、多量の汗をかくスポーツ、真夏の作業などで使うのはおすすめできません。清潔を保つ上で水を被ってしまうリスクと、直接汗が入り込んでしまい、内部劣化を招く可能性があります。
表面の汚れは「ウェットティッシュや水を含んだ布で拭く」程度に抑えましょう。

◇日常生活用強化防水時計
(5気圧防水 10気圧防水 20気圧防水 )


JIS規格,ISO規格により、『水に触れる機会の多い水仕事(漁業・農業・洗車・食堂など)や水上スポーツ(水泳・ヨット・つりなど)をされる方にお使いいただけます』という定義がありますが、実際には各防水機能によって扱いは別になります。

○5気圧防水時計


表記:『WATER RESIST 5BAR』 『WATER 5BAR RESIST』 『W.R.5BAR』など
雨の日に外で活動する、釣り、屋外レジャー、造園、といった「時計本体に水がかかる可能性のある」シーンでお使いいただけます。

特徴は、
○「勢いのある強いシャワーや流水がりゅうずや裏蓋に直接当たらないよう使用には注意が必要」
○「水に浸かってしまうのはNG」です。

基本的に『水仕事がメインの方の仕事での使用はあまりおすすめが出来ません。』
また、洗剤など水以外の溶剤を使用する場合は、内部に入るとパッキンに付着し、劣化を早めてしまう可能性がありますので、洗浄をしたり薬品を扱う仕事の場合は使用しない方がいいでしょう。(綺麗にする上で水に濡らすデメリットもあります。)水洗いをする場合は、蛇口ではなく容器に水を溜めて、手で水をすくいながら洗いかけるのが無難です。

○10気圧防水時計

表記:『WATER RESIST 10BAR』 『WATER 10BAR RESIST』 『W.R.10BAR』など
川遊び、水遊びといった水のかかるレジャーシーン。漁業などの水仕事メインでも使えます。

特徴は、
○「水に浸かっても大丈夫」
○「水泳のできるスペックはあるが場所や使い方を選ぶ」です。

水圧がかかる波の影響、飛び込みなどのアクション、海上や競技用プールなどの深く広い場所での水泳はオススメできません。子供用の浅いプールや川遊び、海では浅瀬や波打ち際の水遊びなどのシーンに限定すると良いでしょう。
水滴が付着した状態でのりゅうずやボタンの操作は、時計内に水が入り込む恐れがあるので控えましょう。海水についた場合、流水(真水)で洗浄してから拭くのが適切です。パッキンの劣化を早めて同時に防水機能を損ねます。水洗いをする場合は、5気圧防水同様、蛇口ではなく容器に水を溜めて、手で水をすくいながら洗いかけるのが無難です。


○20気圧防水時計

表記:『WATER RESIST 20BAR』 『WATER 20BAR RESIST』 『W.R.20BAR』など
水泳や競泳など、実際に水中で自由に泳ぐ際にお使いいただけます。海でのボンベを使わない素潜り(スキンダイビング)も可能です。

特徴は、
○「海やプールで泳ぐことはできるが、潜水はできない」です。

一般的な素潜り(スキンダイビング)は水深10m位と言われます。これ以上深くなる場合は、「潜水時計」、「飽和潜水時計」を使う方が良いでしょう。
使った後は10気圧防水と同様、水滴が付着した状態でのりゅうずやボタンの操作は控え、海水についた場合も同様、流水(真水)で洗浄してから拭きましょう。
水洗いも蛇口から直接行う場合、勢いは弱め、りゅうずやボタンに直接当てるのは避けましょう

防水機能を維持する上では普段から注意が必要

防水機能が備わっているとしても過信は危険。性能が損なわれる条件は意外と多く、普段使う上でも注意が必要です。

○ぶつけたり、落とさないようにする
衝撃が加わると変形により防水機能が損なわれる可能性があります。長持ちさせるためにも丁寧な使用をしましょう。
→普段使用の場合であれば「ぶつけない」というのは中々難しい問題でもありますよね。内部点検も兼ねて定期的なオーバーホールをおすすめします。

○濡れた状態でのボタン操作
手に水分が付着したままリューズやボタンの操作をすると、時計内部に浸水し防水不良の原因になる場合があるため注意しましょう。
→時計が濡れた状態も同様、水分を拭き取った上で操作しましょう。

○お湯で洗わない、入浴時の使用はNG
パッキンは基本的に熱に弱いです。熱変形で浸水の原因になります。また、内部の油の拡散で針、文字盤、ムーブメントの劣化にも繋がります。基本的に「水での使用が前提」で試験されております。
→防水性能に関わらず「入浴時の使用はNG」です。(サウナなどの高温の場所もNGです。)

○洗剤を使わない
洗剤で洗うとパッキンへの付着によりパッキンが劣化します。弾力低下による浸水が考えられます。
→真水で洗いましょう。

○パッキンの交換を定期的に行う
パッキンの種類は様々ですが、長期間の使用で汗や水分の影響を受けます。この影響で劣化し、固く、もろくなり防水機能が低下します。
→電池交換時のパッキン交換や、定期的にオーバーホールをしっかりと行いましょう。

○浸水してしまったらメーカー・修理店へ。
基本的に風防の結露など、浸水してしまったらご自身での対応は避けてメーカーや修理店に頼みましょう。

まとめ

・「WATER RESIST」、「W.R.10BAR」などの表記のある腕時計はJIS,ISOの試験を通っている。

・日常生活用防水時計(2〜3気圧防水)、日常生活用強化防水時計(5・10・20気圧防水)」は「〇〇気圧まで耐えられる」。また、「静止状態」での試験である。

・腕時計にかかる水圧は「流水」や「つけている人の動作」で変化(増加)する。

・各種防水性能でつけられるシーンと手入れ方法は大きく変わってくる。

・防水性能が損なわれる条件は意外と多く、普段使う上でも注意が必要。

いかがでしたでしょうか?ご自身のお持ちの時計の再チェックや、新しい時計の購入をご検討の方へ、使用シーンの想定などに役立てたのであれば幸いです。